
The body on the earth
真っ青な空。白い雲。
大空という大海を泳ぐ鳥たちの鳴き声が響き渡ると、小動物の動くカサカサという音が鼓膜を刺激する。
狩りでもしているのだろうか。猛禽類の鳴き声は恐ろしい。だがそれさえも心地よく感じてしまう。今はどんな音さえも愛せる自信があった。
匂いたつ緑の木々が囁き、風がそっと頬を触れる。天を仰ぐように寝転んだ体に、容赦なく陽光が降り注いでいく。その暖かさが育てたのであろう、背中の花は潰れるのを厭うが如く、凛と花びらを開いていた。
岩肌をなぞるように視線を上げる。視線を空に戻すと、雲の白さが飛び込んできた。どれだけきれいな絵の具でも見せることが出来ない純白。どんな石鹸でも洗い出すことが出来ない真白。
あの雲の上にはなにがあるのだろうか。鳥たちさえも到達できない天上の楽園が広がっているのだろうか。そんなものがあるのなら、一度でいいから見てみたいものだ。
白から黒へ。濁るように灰色に変わっていく雲が、一筋の涙を落とす。山の天気は変わりやすいとは言うが、あまりにも早すぎた。
全身にシャワーを浴びながら、変わりゆく木々を見やる。鳥の鳴き声はいつの間にか消え、辺りには雨音しか聞こえない。露に濡れた苔は彩を増し、喜びを表すかのように水を撥ねている。水を吸い緩くなった地盤は、またも崩落しようとしていた。
水に濡れた体を拭うことなく、そっと瞼を閉じる。暗闇の中で唯一、ミシミシという音だけが知覚できた。
あぁ……助けは、来なか――
fin

この作品はペンギンフェスタ用に書き下ろされた作品です。
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